
更新日: 2025.11.05
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FXのロスカットとは、一定以上の損失が生じた際に、FX会社・証券会社がポジションを強制的に決済する仕組みです。
投資家が口座に預け入れた資金(証拠金)がマイナスにならないことを目的としており、FXを安全に取引する上で重要なルールだと言えます。
Q、証拠金とは?
A、FX会社や証券会社に預け入れる資金を指します。

FXには「レバレッジ」の仕組みがあり、国内では証拠金を担保として最大25倍の取引が可能です。
なお、損失が拡大しそうなときに追加で証拠金を入金しておくとロスカットを回避しやすくなります。
証拠金が一定水準を下回ると発動する安全装置なので、ポジションを保有し続けたい場合は追加で資金を入金しましょう。
FX初心者の多くが「ロスカット」と「損切り」を混同しがちですが、両者には明確な違いがあります。

どちらも「損失を確定させる」という点では同じですが、誰が・どのタイミングで行うかが大きく異なるポイントです。
なお、ロスカットと損切りの主な違いは以下の通りです。
損切り | ロスカット | |
|---|---|---|
決済する人 | 投資家 | FX会社・証券会社 |
発動するタイミング | 投資家の裁量で決まる | 証拠金が一定水準を下回ったとき |
主な目的 | 自主的に損失を抑えるため | 追証を防ぐため |
損切りはあくまでも投資家が主体で行う決済です。
損失を抑えるために自分で行う決済なので、ロスカットのように自動で発動する仕組みではありません。
以上のことから、損切りは「自分で行うリスク管理」であり、ロスカットは「業者による安全措置」だと言えます。
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ここでは、ロスカットの計算方法を初心者向けにわかりやすく解説します。
なお、「FXで強制的にポジションが決済されるタイミングはいつなのか」を理解するためには、以下3つの指標を正しく理解することが重要です。
必要証拠金
有効証拠金
証拠金維持率

必要証拠金とは、FXで通貨ペアを取引するために必要な資金を指します。
たとえば、米ドル/円が「1ドル=150円」の場合、1,000通貨を取引するための必要証拠金は15万円です。

なお、レバレッジをかけて取引できるFXでは、実際の取引金額をすべて用意する必要はありません。
同じく米ドル/円が「1ドル=150円」で、1,000通貨をレバレッジ25倍で取引すると、必要証拠金は6,000円まで下がります。
150円×1,000通貨÷25倍=6,000円(必要証拠金)
このように、必要証拠金は「通貨ペアの価格」と「取引する通貨量」「レバレッジ倍率」の3つで決まる仕組みです。

有効証拠金とは、口座資金のうち、含み損益を反映した実際の資金残高を指します。

有効証拠金は「口座残高+含み損益」の計算式で算出可能です。
たとえば、FX口座に10万円を入金していて、保有するポジションの含み益が5万円の場合、有効証拠金は15万円だと計算できます。
10万円(口座残高)+ 5万円(含み益)=15万円(有効証拠金)
逆に、含み損が3万円の場合、有効証拠金は7万です。
10万円(口座残高)ー 3万円(含み損)=7万円(有効証拠金)
なお、有効証拠金はロスカットに関する重要な指標です。
含み損が拡大し、有効証拠金が減少すると、後述する証拠金維持率が下がり、強制的にポジションが決済されやすくなります。

証拠金維持率とは、ロスカットが発動する基準値です。
国内FX会社の多くが証拠金維持率を50%・100%に設定しており、この水準を下回るとポジションが解消されます。

証拠金維持率は、「有効証拠金÷必要証拠金×100」の計算式で算出可能です。
たとえば、ロスカット水準を50%に設定しているFX会社で、米ドル/円(1ドル=150円)をレバレッジ5倍で1,000通貨取引したとしましょう。
FX口座には3万円を入金しており、現在2万円の含み損が発生した場合を想定しています。
【入金額3万円の場合】
必要証拠金
└150円×1,000÷5倍=3万円
有効証拠金
└3万円-2万円=1万円
証拠金維持率
└1万円(有効証拠金)÷3万円(必要証拠金)×100=約33%
今回のシミュレーション結果では、証拠金維持率が約33%なので、多くのFX会社で強制的にポジションが決済されている状況です。
一方で、FX口座の入金額を5万円に増やして、必要証拠金以上に余裕を持たせておくと、同じ状況でもロスカットが発動しなくなります。
【入金額5万円の場合】
必要証拠金
└150円×1,000÷5倍=3万円
有効証拠金
└5万円−2万円=3万円
証拠金維持率
└3万円÷3万円×100=100%
このように、必要証拠金より多くの資金をFX口座に入金しておくと、損失が自動的に確定してしまう機会を避けられます。
また、レバレッジを抑えて適切な取引量でトレードすると、含み損が拡大するペースが遅くなり、有効証拠金を圧迫しにくくなるので、証拠金維持率を保ちやすいでしょう。
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ロスカットされると自動的にポジションが決済され、強制的に損失が確定します。
なお、強制的にポジションが決済され、損失が確定するまでの具体的な流れは以下の通りです。
相場が保有ポジションと逆方向に動く
証拠金維持率が一定水準を下回る
ロスカットが発動
ポジションが強制的に決済される
損失が確定し、口座残高が減る
とはいえ、証拠金維持率は50%・100%に設定されているので、入金した資金以上にマイナスが生まれるケースは基本的にありません。

ただし、相場の急変時や窓開けなどのタイミングでは、ロスカットが間に合わない可能性があります。
Q、窓開けとは?
A、FXの窓開けとは、週末(金曜日)の為替レートと、土日明け(月曜日)の為替レートに価格差が生まれることを指します。
しかし、ロスカットは完璧なシステムではないので、相場が一気に動いたタイミングでは、証拠金維持率を大きく下回った直後に決済されることも。
このような場合、入金した資金以上にマイナスが生まれるケースもあり、追証としてFX会社・証券会社にマイナス分を支払う必要があるので注意しましょう。
ここでは、以下の条件で追証が発生するシミュレーション結果を紹介します。
取引する通貨ペア | 米ドル/円 (1ドル=150円) |
|---|---|
取引数量 | 1万通貨 |
レバレッジ | 25倍 |
ロスカット水準 | 50% |
口座残高 | 6万円 |
上記の条件で、週末(土日)まで買いポジションを保有しており、月曜日に米ドル/円の価格が142円に下落していたとしましょう。
米ドル/円が「1ドル=150円」のときに買いポジションを1万通貨保有しているので、損失額は8万円です。

FXの損益は、「獲得・損失pips×取引数量」の計算式で算出できます。
Q、獲得・損失pipsとは?
A、通貨ペアの価格変動幅を指します。なお、pipsは通貨ペアの値幅を表す単位です。
本来であれば、証拠金維持率が50%を下回ったタイミングでロスカットが発動し、入金額となる6万円以上の損失は発生しませんが、こちらのケースでは追証として2万円を支払う必要があります。
なお、ロスカットが遅延しやすく、追証のリスクが高まる代表的なケースは以下の通りです。
週末・祝日にポジションを持ち越している
経済指標や地政学リスクによる相場の急落・急騰
市場の流動性が低い時間帯での取引
ここでは、ロスカットされないための具体的な方法を紹介します。
ロスカットは100%投資家の資金を守れる仕組みではないので、緊急時は以下の方法で未然に回避するように心がけましょう。
ロスカットされない方法
十分な証拠金を用意する
低レバレッジで取引する
損切りでポジションを解消する
ロスカットを回避するためには、十分な証拠金を用意しましょう。

必要証拠金よりも余裕のある資金を入金しておくと、証拠金維持率が急激に下がることを防げるようになり、ロスカットが発動する確率を下げられます。
たとえば、以下の条件で米ドル/円を取引し、3万円の含み損が発生したとします。
価格 | 1ドル=150円 |
|---|---|
取引数量 | 1万通貨 |
レバレッジ | 25倍 |
ロスカット水準 | 50% |
必要証拠金 | 6万円 |
必要証拠金と同額の6万円で取引していた場合、証拠金維持率が50%に下がるので、わずかな値下がりですぐにロスカットが発動します。
【6万円で取引した場合】
有効証拠金
└6万円−3万円=3万円
証拠金維持率
└3万円÷6万円×100=50%
一方、必要証拠金の2倍である12万円を入金して取引した場合、同じく3万円の含み損が発生してもロスカット水準まで余裕があります。
【12万円で取引した場合】
有効証拠金
└12万円−3万円=9万円
証拠金維持率
└9万円÷6万円×100=150%
証拠金維持率は150%なので、さらに含み損が拡大したとしてもすぐにロスカットされる可能性はほとんどありません。
このように、必要証拠金に対して余裕のある資金を入金しておくと、ロスカットが発動する確率を下げられるので、安全に取引したい方には証拠金にゆとりを持たせておくことをおすすめします。
ロスカットを回避したい方は、低レバレッジで取引するように心がけましょう。
レバレッジが高く、取引数量が多くなるほど、わずかな値動きでも証拠金維持率が急落し、ロスカットが発動するリスクが高まります。
以下の表で紹介している通り、レバレッジ倍率を上げて取引数量を増やすと、たった1円の値動きでも損失が拡大し、証拠金維持率が下がりやすくなるので注意しましょう。
レバレッジ倍率 | 取引数量 | 1円の値動きによる損益 |
|---|---|---|
1倍 | 100通貨 | ±100円 |
5倍 | 500通貨 | ±500円 |
10倍 | 1,000通貨 | ±1,000円 |
15倍 | 1,500通貨 | ±1,500円 |
20倍 | 2,000通貨 | ±2,000円 |
25倍 | 2,500通貨 | ±2,500円 |
※証拠金は1万円で、為替レートが「1通貨=100円」の銘柄を取引することを想定しています
ロスカットを未然に回避するためには、裁量で損切りしてポジションを整理するのも一つの手です。
ロスカットが発動する前に損切りすると、ポジションが強制決済されるときよりも損失を抑えられます。

FXを取引する上で、損切りルールを徹底することは非常に重要です。
たとえば、3万円の含み損でロスカットが発動するポジションを保有している場合、1万円の損失が生じた時点で損切りするといいでしょう。
取引前に損切りルールを決めておくだけで、ロスカットが発動する前に決済できるようになり、損失を最低限に抑えられます。
なお、損切りルールは「値幅」や「証拠金維持率」で決めるケースが一般的なので、トレードスタイルや資金力に合わせて、オリジナルのルールを作成してみてください。
Q、ロスカットのデメリットは?
A、ロスカットのデメリットは、保有しているポジションが強制的に決済されてしまうことです。一時的に含み損が拡大したとしても、相場は狙った方向に戻る可能性があるので、損失を取り戻すチャンスを失ってしまいます。
Q、海外FXのロスカット水準は?
A、海外FXのロスカット水準は0%〜50%程度です。一部の海外FXでは「ゼロカットシステム」を採用しており、有効証拠金以上の損失が発生しても、投資家は追証を支払う必要がありません。
Q、ロスカットに手数料はかかりますか?
A、一部のFX口座ではロスカットに手数料がかかります。「1取引単位あたり〇〇円」といった料金体系が設定されているケースが一般的です。
Q、FX会社のメンテナンス中にロスカットは発動しますか?
A、FX会社のメンテナンス中にロスカットは原則発動しません。そのため、メンテナンス中に一定の証拠金維持率を下回り、入金した証拠金以上のマイナスが生まれるリスクがあります。