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東京大学経済学部を卒業後、大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程に進み、博士(経済学)を取得。名古屋市立大学大学院経済学研究科で講師を務めた後、テンプル大学Fox School of Businessでの客員研究員、コロンビア大学日本経済経営研究所でのフルブライト客員研究員としての研究経験を経て、現在は名古屋市立大学大学院経済学研究科准教授を務める。専門はコーポレートガバナンスや証券市場分析で、企業統治や財務会計を対象とした実証研究を続けている。学会活動にも力を入れており、日本ファイナンス学会理事、日米教育交流振興財団評議員も務める。
株価やチャートの動きに一喜一憂し、投資判断に悩んでいる投資初心者の方は多いのではないでしょうか?そこで今回は、コーポレートガバナンス・証券市場分析研究を行っている坂和准教授に、財務情報を使った投資判断のメリットについてお話を伺いました。
現在までの研究者生活では、実証分析を中心に研究を行ってきました。実証分析とは、「データを用いて、理論的に考えられる関係性などが本当に成り立つか?」ということを検証する方法論になります。
その中でも、財務情報の実証分析とは、「企業が決算などで公開する財務報告」のデータを用いて、検証を行う会計・ファイナンス分野の研究領域です。
また、コーポレートガバナンス研究とは、「上場企業の経営者がどのように株主と向き合うか?」あるいは、「企業経営の質を高めるために、どのような取締役会を組織すればいいか?」など、「企業は、どのように経営されればより多くの企業のステークホルダー(利害関係者)が満足できるか?」といったことを研究する領域になります。
これらの領域に関心をもったきっかけは、自分自身が研究を始めた時期にさかのぼります。
20年くらい前の日本企業は、「コーポレートガバナンス」の仕組みがうまくいっていないという批判を受けることが非常に多かったです。
日本経済は、1990年代後半から、失われた30年とも呼ばれる「低成長」の時代を迎えたとされていますが、外国人投資家を中心に、「日本企業のコーポレートガバナンスがうまくいっていないことが、日本の低成長の原因ではないか?」という指摘があり、海外メディアを中心によく取り上げられておりました。
そのような状況の中で、当時の「日本企業のコーポレートガバナンス」研究は、「海外企業と日本企業のコーポレートガバナンスはどう異なるか?」という制度的な分析が多く、「データ」を用いた研究は少なかった印象があります。
当時は研究の少なかった「日本企業のコーポレートガバナンス」について、もう少し深く知りたいと思ったことが、この研究領域を選んだきっかけになります。
「日本企業は変わるべきだ」という海外からの指摘に、データで向き合おうとしたのが研究の出発点だったのですね。では、そういった研究の視点が実際の投資判断にどう活きるのかを伺っていきましょう。
投資判断をする際には、財務情報の実証分析などの研究の視点は多いに役立つと思います。
財務情報の実証分析を含む研究の世界では、たとえば、「株価はどのような要因に反応して、動くのか?」という点について、数多くの分析が行われています。
「株式投資の収益率」については、多くの理論モデルが考えられています。そして、「理論モデルが本当に妥当なのか?」を検証するために、「本当に理論モデルで考えられた要因は、株価に影響するか?」について、データを用いた実証分析のアプローチで、検証されています。
一例をあげますと、投資判断を行っている人は、「バリュー株」という言葉を聞いたこともいるのではないでしょうか?
「バリュー株」とは、株価が割安(市場で過小評価)されている株式であり、「バリュー株式に投資した方が、平均より高い収益率が期待できる。」といった関係が、過去の研究では、明らかにされております。
コーポレートガバナンスの研究との関連性という意味では、「コーポレートガバナンスメカニズムは、企業経営にどう影響するか?」といった研究が多く進められております。
私の研究でも、「TOPIX500企業において、機関投資家(いわゆる物言う株主)や外国人投資家の株式所有が増えると、その圧力で企業経営状況が改善する」などといったことを実証分析で示した研究があります。
この例は、株式投資を行う際には、コーポレートガバナンスにも注目した方がいいことを示唆しています。
これらの例で分かるように、財務情報の実証分析やコーポレートガバナンス研究で得られた視点は、投資判断をする際に役立つ形で活用されていることが多いと思います。
大株主に機関投資家や外国人投資家が多い企業は、経営を監視する目が働きやすく、将来的な経営改善が期待しやすいことが研究からわかったのですね。
企業のIR情報にある「大株主の状況」は誰でも確認できます。機関投資家や外国人投資家の比率が高い企業は、経営改善への圧力がかかりやすいという視点も、投資先選びのヒントになりそうです。
投資を始めたときに、どうしても目先の株価に注目する気持ちは非常にわかります。
特に、始めた当初は、「株価が上がったら、うれしくなり、下がったら、焦る」といった気持ちを多くの方が持つと思います。
次に、チャートを見るようになると、もう少し長いスパンで、株価変動を見れるので、「どこまで上がるのだろうか?」とか「そろそろ底値ではないか?」といった点が気になる人も多いと思います。
これらの変動には、株価のトレンドを表しているので、「トレンドにうまく乗れば、短期売買で利益を得ることも可能かもしれません。
では、財務情報を合わせて見ると、何がいいのでしょうか?企業の株価のトレンドは、市場に入ってくる多くの情報で変わります。
個別企業毎に、「株価に影響を与える要因」としては、企業が報告する「財務情報」が大きな要因を果たします。
たとえば、決算報告で、「過去最大の利益」といった情報が入れば、その企業の経営が非常にうまくいっていることが分かるので、多くの投資家は、今の株価は割安ではないかと思い、その企業の株式を買います。そうすると、当然、株価は大きく上昇することが予想されます。
投資家は、プロの投資家も含めて、企業の外部の人間なので、企業が報告する「財務情報」を見て、その企業の経営状況を判断します。
したがって、「財務情報の良しあし」にしっかり注目したうえで、投資先を選択することは、投資にとって、非常に重要と考えられます。
インデックス投資のように運用を任せる方法とは異なり、財務情報を自分で確認しながら投資先を選ぶプロセスには、企業の「今」を読み解く面白さがあります。まずは決算発表のニュースを見て「過去最大の利益」のような言葉に注目してみるのもいいかもしれません。
①ROE(Return on Equity)
財務情報の中で、まず重要なのは、企業がその規模に見合っただけの「十分な利益を上げているかどうか?」という指標になります。
たとえば、ROE(Return on Equity)といわれる「自己資本利益率」の指標は、非常に重要な指標になると考えられます。
ROEは、企業の「当期純利益」を、企業の「自己資本」で割るという簡単な計算で求められます。
「当期純利益」や「自己資本」は、企業の財務報告で情報開示されているので、投資したい企業について、簡単に自分で計算することもできますし、面倒な人は、「四季報」を見るとかYahoo Financeを見るとかでもその値を見つけることができます。
②配当性向
次に、少し長期投資をする人にとって、重要な指標としては、「配当性向」ということになるかと思います。
株式を、ある程度の期間保有した人は、企業の利益の一部を、「配当」という形で還元されます。
配当性向とは、企業の「配当金」の総額を、「当期純利益」で割ることで求められます。
したがって、「配当性向」を見れば、企業が利益の内、何%程度を株主に還元したか?が分かります。
配当性向が高ければ、投資家にとっては、投資先の企業の利益から高い還元率で利益配分を受けることができるので、これは配当が行われる時まで株式を保有した人にとっては、企業利益からの還元を受けることができる指標になるかと思います。
これから資産形成を始める読者の皆様は、「投資をどうすればいいか?」ということで色々と情報収集をされたり、考えられたりされていると思います。
資産形成のための投資ということが、一般的な時代になり、「長い人生において、お金の管理をどうするか?」ということで、「投資」と向き合う時間は確実に長くなっているかと思います。
新NISA制度なども充実してきているので、投資に対する「非課税制度」を活用することで、「昔に比べれば、資産形成をしやすい環境が整っているともいえる」かと思います。
そのような環境であるがゆえに、より投資に対する適切な知識(リテラシー)が必要な時代といえるでしょう。
「財務情報」との付き合い方ということを考えても、財務情報の公開も進んでおり、簡単に財務情報を入手することが可能な時代になっています。
自分が投資をしようとする株式については、「財務情報」をチェックしたうえで、「長期の積み立て投資の対象になりそうか?」あるいは「短期的に株価が値上がりしそうな割安の株式なのか?」といった点を確認したうえで、根拠を持って投資を行うことが大切になるかと思います。
投資を行う際には、「何となく」投資するのではなく、根拠を持って投資を行うことが重要です。その際に、財務情報を紐解くことで、「自分の投資スタイルとあった投資先か?」ということを考えることが重要になるかと思います。
「なんとなく」ではなく「根拠を持って」投資先を選ぶ。財務情報はそのための心強い手がかりになりそうです。新NISAをきっかけに投資を始めた方も、ぜひ一度、気になる企業の財務情報を覗いてみてはいかがでしょうか。
インタビュー対象 | 坂和秀晃 准教授(名古屋市立大学大学院経済学研究科/コーポレートガバナンス・証券市場分析専門) |
インタビュー実施日 | 2026年9月 |
実施方法 | インタビュー |
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